2021-07

知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(74)

 小学校の時には、三・四年の時だけクラスが同じだった。 それでもその後もよく遊んでいたのは、何でだっけ。校庭が解放されていたから、放課後にしょっちゅう一緒に遊んでいた気がする。二人でじゃなく大勢で、遊具で遊んだりサッカーをしたり、よく分から...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(73)

「え……? いや、俺は絶対に忘れたくないんだけど」 呆然とした表情のまま、圭一が独り言のようにそう言う。「ほんとに全然怒ってないし。お前の中で嫌なところなんかひとつもない。お前だけが好きだし、せっかくお前と付き合えたんだから絶対に忘れたくな...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(72)

 沈黙が続く。 旭は少しずつ、取り返しのつかないことをした罪悪感に押し潰されそうになっていった。 どう考えても、忘れられた旭よりも、忘れてしまっていることを知った圭一の方が辛いに決まっている。よく考えもせずにあんなことを言うんじゃなかった。...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(71)

「――いや、ちょっと意味が分からない」「うん。ごめん、変なこと言って」 ついでに布団の上に散らばっていた衣服を集める。「お前のこと疑うとかじゃなくて……いや、何かよく分からないけど、えと……でも、お前が今ここで嘘吐く訳ないだろうし」「お前に...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(70)

19.告白 布の中で体を丸め、こみ上げてくるままにひたすら泣き続けていると、そのうち徐々に涙も止まり、呼吸も落ち着いてきた。 少しだけ冷静さを取り戻した旭は、タオルケットから顔を出した。電気がついたままの部屋には誰もいない。そう言えば明るい...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(69)

 圭一がどんなに好きだと言ってくれても、結局、旭とは付き合えないのかもしれない。 夏休みの間だって、二人でいた時間はあんなに穏やかで自然だったのに、やっぱり最後には忘れられてしまったのだから。 何度やり直したって、永遠にうまくいかないのかも...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(68)

「今どれくらい入ってる……?」「先っぽが入ったくらい」 まだそんなものなのか。体感の割には全然進んでいない。終わりの見えない状況に、一瞬気が遠くなる。「一回抜く?」「駄目」「旭」「まだいけるから……もっと入れて」「でも」「入れて、大丈夫だか...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(67)

 ジェルを伸ばした手で、前と後ろを同時にいじられる。以前と同じように、旭は目を閉じてそこの快感に集中しようとした。 圭一の指がそこを穿ってくる。旭は意識して呼吸を繰り返しながら、全身の力を抜いた。以前よりも辛くない気がする。圭一が慎重に慎重...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(66)

 裸で圭一と抱き合うのは初めてだ。 肌に触れる滑らかな感触が気持ち良くて、旭からも体を密着させて圭一の背中に手を回した。圭一の手が背中を這い、唇が肩や首に触れる。 再び布団の上に横たえられた後、すぐにハーフパンツと下着を脱がされた旭は、「お...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(65)

 いつものように、圭一の呼吸を近くに感じる。 緩んだ腕にもう一度力を入れて、精一杯、圭一にしがみつく。圭一は旭に体重を掛けないように四つん這いになり、上半身だけを低くして、旭の首元に鼻をすり寄せてきた。やがて首筋に舌が触れ、耳たぶが湿った感...
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