知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(94)

『 圭一へ 俺はお前が好きだから  何回でもお前とつきあう もし忘れたらまた告白してこい         黒崎旭※かぎは下のポストに入れとく。 起きたらラインして。』(完)
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(93)

「……圭一」 確かめるために静かに呼び掛けてみたが、返答はない。 圭一を起こさないようにそっとその腕から抜け出し、旭はそのままベッドから降りた。圭一は旭を抱き締めていた姿勢のまま規則的な寝息を立てている。旭はその裸の体にタオルケットを掛けた...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(92)

 旭の呼吸が落ち着き、再び目を開けた頃、圭一もまた抽挿を再開した。――そう言えば、圭一の気持ちいい顔が見たかったんだった。 旭はそう思い出して、その顔を見つめた。中の刺激は変わらず何かをもたらすけれど、一度射精した後なら、少しは圭一を見守る...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(91)

 圭一は再び体を起こして、自分は動こうとしないまま、旭のものを扱き始めた。「我慢してんの?」「え?」「動いていいよ」 挿入する気持ち良さは旭も知っている。考えてみたら、圭一は今までずっと、そこを我慢して旭の体を気遣ってくれていたのだ。毎回、...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(90)

 少しずつ、圭一の熱いものが入ってくる。何回目かで味わう感覚。段々と慣れてきた感覚。 今日こそ受け入れたいから。「いける……?」 圭一がまた問い掛けてくる。旭ももう一度頷く。 入ってきたそれはしばらく動かず、その代わりに圭一の手が再び旭の前...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(89)

 そう言えば、圭一が記憶を持ったまま旭の体に再び触れるのは初めてだったな、と旭はぼんやりと思った。 ノートに書かれていたことが、どうしても頭をよぎる。乳首が感じるとか……中をこすられるのがどうとか……絶対に圭一も今そのことを思い出ながらして...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(88)

 圭一だって、きっと本当に嫌な訳じゃない。だから、躊躇しながらも、最後まで旭を強く拒絶したりはしていない。 それでもどこか腰が引けているのは、それこそが圭一の持つ葛藤なのだろう。 自分のやりたいようにやることは誰かの意思を無視することになる...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(87)

 旭は体を離し、力を込めて圭一の体をベッドの上に押し倒した。それからベルトに手をかける。制止しようとする圭一に構わず、手早くそれを外すと、下着ごと一気に全てを脱がせた。「ちょ、旭!」 さっきよりは萎えているそれを握ろうとしたが、圭一に手首を...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(86)

 シャツを脱がせ終わった旭は、自分のよりも逞しいその胸に手を這わせた。いつもの温かさを求めて体を寄せると、少しだけ躊躇った後、圭一も腕を回してきた。旭が頬を押し付けると、圭一の手にもぎゅっと力がこもる。「……お前のことを信じてないとかじゃな...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(85)

 旭の怪我を覚えていないのは、単に些細なこととして忘れてしまったからか。 それとも、今回と同じように、圭一の無意識が記憶を失わせてしまったのか。 別に圭一のせいで怪我をした訳でもなかったから、単に覚えてないだけかもしれないけど。 もしかして...
PAGE TOP