旭の呼吸が落ち着き、再び目を開けた頃、圭一もまた抽挿を再開した。
――そう言えば、圭一の気持ちいい顔が見たかったんだった。
旭はそう思い出して、その顔を見つめた。中の刺激は変わらず何かをもたらすけれど、一度射精した後なら、少しは圭一を見守る余裕も出た。
ああ、そうだ。これが圭一の初めてだ。
圭一の初めてが俺で良かった。
思いがけない感情が湧いてくる。目の前で気持ち良さそうに顔をしかめている圭一の表情が、ある種の情動を旭の中にかきたてた。これは自分だけのものだと、何故かそう強く思う。圭一が好きなのは旭だけだ。これからも旭だけであってほしい。旭だけを欲しがってほしい。そのためなら何度でも圭一を受け入れるから。
そんなことを取りとめもなく考えながら、止まることなく自分の体で快感を求め続ける圭一を旭はただ見つめていた。自分だけに見せるその表情を覚えておこうとした。自分の体の中に入り込んでいるその存在、それを許せたその存在が自分にとって何なのかを、まとまらない頭で考えようとした。圭一の汗がそのあごを伝って旭の胸に落ちる。
いよいよ切羽詰まったようにその動きが加速した後、かすかに声を漏らしながら、旭の中で圭一が達するのが分かった。
自身を抜き、息を切らしながらゴムを外した後、圭一は倒れ込むように旭の横に体を横たえた。さっきまで圭一が入っていた場所がぽっかりと空洞になっているようで、旭は無意識に足をすり合わせる。
旭が横を向くと、圭一が手を伸ばして旭の頬に触れた。
「……旭」
「ん?」
「俺……」
まだ落ち着かない呼吸とともに、圭一の肩も上下している。何か口にしかけて後に続かない圭一の言葉を待っていると、徐々にその瞼が重たげになっていくのが分かった。
「眠い?」
「ん……」
完全に閉じようとする寸前に、はっと圭一が目を開ける。旭は思わず微笑んだ。
「寝ていいよ」
「……」
もはや言葉も出ず、圭一はただ薄く口を開くだけだった。旭は圭一に体を寄せ、もぐりこむように圭一の腕の中に入って、その胸に頬を当てた。圭一の手が旭の背中と頭に回る。いつものようにその指が旭の髪を梳く。
「――」
しばらくそうしているうちに、やがて旭の背後で圭一の腕がぱたんとシーツの上に落ちた。