知らぬ間に失われるとしても 知らぬ間に失われるとしても(39) 圭一の口が離れ、代わりに手が何度か屹立をゆるく扱く。その手も離れて圭一が動く気配がしたので、旭は目を開けた。 ベッドの下に手を伸ばした圭一が、何かを取り出す。「……何?」「ジェル」「買った?」「うん」 柏崎に教えてもらった、と圭一が呟くよう... 知らぬ間に失われるとしても
知らぬ間に失われるとしても 知らぬ間に失われるとしても(38) ――本当に、圭一とセックスするのか。 こうやって裸にされて。 組み伏せられて。 愛撫されて。 何故か、頭の中では元カノと行ったホテルの部屋の光景を思い出していた。あの時の自分は今の圭一と同じだ。あの時自分の中に生じた激しい興奮が、今の圭一の... 知らぬ間に失われるとしても
知らぬ間に失われるとしても 知らぬ間に失われるとしても(37) 背中に触れていた手がTシャツの裾をくぐり、初めて旭の素肌に触れる。人に触られる時だけ異様に敏感になる場所を撫でられ、旭は思わず息を詰めた。呼吸を止めて全身に力を込め、くすぐったいようなその感覚に耐える。 何度も背中を撫でた後、圭一の手が下に... 知らぬ間に失われるとしても
知らぬ間に失われるとしても 知らぬ間に失われるとしても(36) 12.圭一の部屋2 『明日、うち来る?』 前日に、圭一は旭の意思を再確認するようにラインを送ってきた。既に腹をくくっていた旭は、『行く』とだけ返した。 その日も家で昼食を済ませた後、旭は念の為シャワーを浴びてから圭一のマンションへ向かった。... 知らぬ間に失われるとしても
知らぬ間に失われるとしても 知らぬ間に失われるとしても(35) 今日も、唇を離した後に圭一は旭の体を抱き締めてくれた。昼間に汗をかいたからか、圭一の匂いがいつもよりも強い。でもそれが全く嫌ではなくて、むしろ安心感が強まるような気すらする。――もう自分の中で結論は出ているのかもしれない。 少し前から何とな... 知らぬ間に失われるとしても
知らぬ間に失われるとしても 知らぬ間に失われるとしても(34) 旭が夕食をおごると言うと、圭一は頑なに拒んだ。「いいよ。自分で払うから」「でも、バイト代出たし」「せっかく稼いだんだから、自分のために遣えって」「これも自分のためだから」「変な気遣わなくていいから、まじで」「俺がおごりたいんだよ」 口調を強... 知らぬ間に失われるとしても
知らぬ間に失われるとしても 知らぬ間に失われるとしても(33) 11.USJ 結局、USJに行けたのは夏休みの終盤だった。旭のバイト代が振り込まれるのが意外に遅かったからだ。圭一がお盆に祖父母からもらうお小遣いを当てにしていたように、旭も田舎でお小遣いをもらえたのだけど、何となく、せっかくだから自分で... 知らぬ間に失われるとしても
知らぬ間に失われるとしても 知らぬ間に失われるとしても(32) 大した理由でもないのに辞めていいのだろうか。言い訳にして逃げているだけじゃないか。それともバイトなんてそういうものなんだろうか。普通はどうするものなんだろう。圭一だったら。 その夜、旭はいつの間にか寝落ちするまでずっとぐるぐると考え続けたが... 知らぬ間に失われるとしても
知らぬ間に失われるとしても 知らぬ間に失われるとしても(31) 月曜日の夜、夕食を食べ終えた旭は、何でもないふりをしつつ食卓に残っていた。今日は珍しく父親の帰りが早くて、逆にうるさい姉が外食でいない。好都合だった。「……あのさ」 母親がキッチンに立ったタイミングを見計らって、テレビを観ている父親にさりげ... 知らぬ間に失われるとしても
知らぬ間に失われるとしても 知らぬ間に失われるとしても(30) 「それ、セクハラとかじゃないの」 それまで楽しそうに話していたのに、圭一の表情が真剣なものに変わっていた。「セクハラ? いや、一応女の人だって」「女から男へのセクハラだってあるだろ」「……でも、おかんより更に上の人だし」 何となく認めたくな... 知らぬ間に失われるとしても