知らぬ間に失われるとしても 知らぬ間に失われるとしても(9) 3.圭一の部屋 それ以降、圭一と柏崎が一緒にいる時に出くわすと、柏崎もその場に留まることが多くなった。そしてたまに三人で話したり、学食で昼食を取ったりした。そうこうするうちに、柏崎と旭の間にも徐々に友人と言ってもよいような気安さが... 知らぬ間に失われるとしても
知らぬ間に失われるとしても 知らぬ間に失われるとしても(8) 「もしさ、仮に柏崎に告白されたとしたら、お前、どうする?」 旭の気も知らず、圭一が更におかしな質問をしてくる。「え? だって彼氏いるんだろ」「じゃなくて、柏崎みたいなやつにってこと。仮定の話だよ」「それは、さすがに断るんじゃね」「でもお前... 知らぬ間に失われるとしても
知らぬ間に失われるとしても 知らぬ間に失われるとしても(7) 「……」「……」 残された二人で、しばらく無言で弁当を口に運ぶ。会話がなくなると、途端に今まで聞こえていなかった遠くの学生たちの喧騒が風に乗って耳に入ってきた。 要するに、あれだ。多分あの後、教室で圭一は実際に旭のことを柏崎に伝えた。それ... 知らぬ間に失われるとしても
知らぬ間に失われるとしても 知らぬ間に失われるとしても(6) 旭は静かに混乱していた。 何か言った方がいいのかもしれない。でも何を? いいんじゃない、とか何とか? そもそも、いいとか悪いとか言う権利も別になくないか? 旭に考える余地があるとすれば、旭自身がどう思い、どう反応するかだけだ。とりあえず... 知らぬ間に失われるとしても
知らぬ間に失われるとしても 知らぬ間に失われるとしても(5) 「もう6月だぞ。全然知らなかったっつの」「別れたっていうか、何か自然と会わなくなった感じ」 春休み中、そう言えば連絡がないな、くらいは思っていたのだけど、4月に一学期が始まってからふと廊下で顔を合わせた時に向こうが目を逸らして素通りしてい... 知らぬ間に失われるとしても
知らぬ間に失われるとしても 知らぬ間に失われるとしても(4) 2.屋上にて 昼休み、約束どおり旭が弁当持参で屋上に座っていると、少し遅れて来た圭一の横には、何故か柏崎の姿もあった。「ほら、連れてきてやったぞ」「え、あ……ども」 にやりと笑う圭一と、目を合わさないまま軽く会釈する柏崎。二人とも... 知らぬ間に失われるとしても
知らぬ間に失われるとしても 知らぬ間に失われるとしても(3) 前を歩いていた柏崎がふと何気なくこちらを振り返り、旭に気付くと、圭一に何かを言った。すぐに圭一が振り向き、笑顔で手を振ってくる。旭も手を振り返す。歩調を速めて二人に追いつこうとしたが、その場で待っている圭一を置いて、柏崎は一人先に歩いて... 知らぬ間に失われるとしても
知らぬ間に失われるとしても 知らぬ間に失われるとしても(2) 毎日毎日、嫌になるほど繰り返し上っては下りる急な坂道を、黒崎旭は今朝も上っていた。 梅雨もそろそろ明けて、夏本番の到来を感じさせる日差しの中、歩いているだけで自然と汗が流れ落ちる。通学路だから仕方がないが、あと一年半以上も上り続けないと... 知らぬ間に失われるとしても