続・偽りとためらい 続・偽りとためらい(52) 「……要するに、お前の方に続ける気がないってことか」 高志が硬い声を出すと、茂は俯いたまま唇を噛み締めた。それから、ほんのわずか、見えるか見えないかの小ささで首を振る。「――そうじゃない」 声に潜むかすかな震えに気付いて、高志は苛立ちをぶつ... 続・偽りとためらい
続・偽りとためらい 続・偽りとためらい(51) 最終章 12月 服を着てキッチンに行き、冷蔵庫を開ける。喉が乾いていた。ペットボトルの水を取り出して部屋に戻り、ベッドの縁に腰かけて飲んでいると、茂が目を覚ました。高志を見てすぐに柔らかく笑う。「……寝てた」「ちょっとだけな」「俺もちょう... 続・偽りとためらい
続・偽りとためらい 続・偽りとためらい(50) ゆっくりと時間をかけて茂に負担のないように充分に解してから、「いけそう?」と声を掛けると、茂は離れないまま頷く。「お前は?」「いけるよ」「……勃ってる?」「うん」 そう答えて、高志はそっと指を抜いた。体を起こした茂が、確かめるように高志の股... 続・偽りとためらい
続・偽りとためらい 続・偽りとためらい(49) 「――なあ」 ヘッドボードに置いたジェルとゴムを取ろうと身を起こすと、茂が下から話し掛けてくる。「ん?」「矢野さんにやったみたいにやって」 そう言った茂が何を求めているのか、高志にはすぐに分かった。「いいよ」 ゴムとジェルをいったんシーツの... 続・偽りとためらい
続・偽りとためらい 続・偽りとためらい(48) 部屋に戻ると、高志と茂はそれぞれ上着を脱ぎ、買ってきたものをローテーブルの上に置いた。何となくそのまま床に腰を下ろす。 しばらく無言で座っていたが、やがて茂が口を開いた。「俺、もう一回風呂入っていい?」「うん」 茂の姿がバスルームに消えると... 続・偽りとためらい
続・偽りとためらい 続・偽りとためらい(47) ぎし、とベッドが傾くのを感じて、ふと目を覚ます。いつの間にか転た寝していたようだった。既に電気は消されて暗闇に包まれた中で、茂が横に入ってくる。「ごめん」 茂が、囁くように言う。「俺、ここで寝ていいんだよな」「うん」 体の向きを変えながら、... 続・偽りとためらい
続・偽りとためらい 続・偽りとためらい(46) 第10章 12月-二人 ふと気付けば、22時を過ぎていた。「お前、泊まるなら、先に風呂入れよ。体冷えてるだろ」 外で座り込んでいた茂の手を取った時、氷のように冷えていたのを思い出し、高志はエアコンをつけた。それから湯船にお湯を溜めるために... 続・偽りとためらい
続・偽りとためらい 続・偽りとためらい(45) 「――なあ」 やがて、空気を変えるように、茂が明るい口調で聞いていた。「ジェルって、コンビニに売ってると思う?」「え? さあ……なさそうだけど」 いきなり変わった話題に、高志はとりあえず答える。「だよな」 それから茂は、足元の鞄から財布を取... 続・偽りとためらい
続・偽りとためらい 続・偽りとためらい(44) ふと、高志は唇を離した。 高志の下半身に茂の腰の辺りが触れているのに気付く。その意図的な接触は、そこに顕れた高志の興奮を確認するように小さく動いた。そうして見上げてきた茂は、高志と目が合うと、視線を逸らして顔を伏せた。 それからしばらく躊躇... 続・偽りとためらい
続・偽りとためらい 続・偽りとためらい(43) 「……何だよ」 やがて茂が聞き取れないくらいの声を発する。高志は再び茂の顔を見た。「……お前が電話してきたんだろ……」 俯いたまま、茂が呻くようにそう言った。握りしめた手がかすかに震えている。「お前が、また会いたいって言ったんだろ……! だ... 続・偽りとためらい