そう言えば、圭一が記憶を持ったまま旭の体に再び触れるのは初めてだったな、と旭はぼんやりと思った。
ノートに書かれていたことが、どうしても頭をよぎる。乳首が感じるとか……中をこすられるのがどうとか……絶対に圭一も今そのことを思い出ながらしているのだろう。そう考えると、つい素直に反応するのを我慢してしまう。でも圭一が旭のためにやっているのは分かっているから、旭はなるべく羞恥心を捨てるように心掛けた。
自分ができることは何だろうか、と旭も考えて、圭一の股間に手を伸ばす。けれど、圭一が徐々に下の方に移動すると、すぐに手が届かなくなる。この前一瞬だけ見た、圭一の気持ち良さそうな顔。あれをまた見たい。
――ああ、そうか。自分が今度こそ圭一を受け入れることができれば、圭一も気持ち良くなれるのか……。
そんなことを考えていると、ジェルをまとった圭一の指が何度目かで旭の体の中に入ってきた。
「……痛い?」
相変わらず、圭一は慎重にそう聞いてくる。旭は首を振った。
「ううん。……ちょっと慣れてきた」
中で指を動かしながら、圭一のシルエットがこちらの様子を伺っている気配がする。薄く目を開けて圭一を見上げながらも、旭の意識は内側の感覚に自然と集中していた。
多分……、気持ちいい。これが、きっと。
「……ぅ……」
指が増えて、圧迫が増す。でもまだ大丈夫だ。本当に慣れてきているかもしれない。二本に増えた指が内壁を擦り、旭は思わず小さく声を洩らした。
「痛い?」
「……違う……、ん……」
速い呼吸で胸が上下する。圭一の影が遠ざかり、身を屈めたように低くなる。
それから、旭の屹立が温かい粘膜に包まれた。
「は……!」
思わず腰を突き上げてしまう。圭一の口の中に何度か吸い込まれては出された後、今度は舌で舐め上げられる。大きく開いた脚を片手で押さえ込まれ、後ろでは圭一の指がひっきりなしに動いている。零れるほどに使われたジェルが肌を伝う。
「あっ、……まっ」
初めてのその耐えきれない何かに、旭はこみ上げてくる声を必死に噛み殺した。やがて口を離した圭一が、代わりにジェルを広げた手のひらで旭のそれを擦り上げる。文句なしの快感が旭の呼吸を更に速くする。
「……っ」
「気持ちいい?」
「んっ……」
前を刺激されながら、後ろでは圭一の指が絶えず動いて内壁を擦り続ける。両方いっぺんに触られるといっそう耐え難くて、旭は息を乱して体を震わせ続けた。
「あっ、……んぅ……っ」
「――お前」
そんな旭を見ていた圭一が、切羽詰まった声を出す。
呼び掛けられて、旭は閉じていた目を開いた。こちらを凝視している圭一と目が合い、しばらくお互いに呼吸を乱したまま見つめ合う。やがて圭一は後ろの指を抜いた。
「……もう入れさせて」
「ん……」
旭の足元で圭一がゴムを着けている。旭は力なく開いた両脚をそのままにして、圭一を見下ろしていた。着け終わった圭一が向き直り、旭の足を抱え上げる。
「痛かったら言って」
「……うん」
いつも絶対にそう言ってくれる圭一に、旭は微笑みながら素直に頷いた。