知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(4)

2.屋上にて 昼休み、約束どおり旭が弁当持参で屋上に座っていると、少し遅れて来た圭一の横には、何故か柏崎の姿もあった。「ほら、連れてきてやったぞ」「え、あ……ども」 にやりと笑う圭一と、目を合わさないまま軽く会釈する柏崎。二人とも円を描くよ...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(3)

 前を歩いていた柏崎がふと何気なくこちらを振り返り、旭に気付くと、圭一に何かを言った。すぐに圭一が振り向き、笑顔で手を振ってくる。旭も手を振り返す。歩調を速めて二人に追いつこうとしたが、その場で待っている圭一を置いて、柏崎は一人先に歩いてい...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(2)

 毎日毎日、嫌になるほど繰り返し上っては下りる急な坂道を、黒崎旭は今朝も上っていた。 梅雨もそろそろ明けて、夏本番の到来を感じさせる日差しの中、歩いているだけで自然と汗が流れ落ちる。通学路だから仕方がないが、あと一年半以上も上り続けないとい...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(1)

1.坂道の途中 要するに。 自分の親友が実はゲイだったらどうするか、ということだ。
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