知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(24)

――何か、付き合ってるって感じするな。 あの日以来、圭一と一緒にいる時間は今までにないほどに増えた。テスト前一週間は毎日一緒に帰って圭一の家で勉強したし、土日も一緒に勉強した。勉強を終えてからキスするのはもう日課のようになっている。キスは徐...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(23)

「黒崎くん、下の名前、アサヒっていうんだ」 三人でお昼を食べている時に、ふと柏崎にそう言われた。今日は学食に来ている。「そう」「どんな字?」「一文字で、『旭』」 空中に書いて示す。 付き合いだしてから、圭一は旭を下の名前で呼ぶようになってい...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(22)

8.キスと反応 翌日以降も、旭は放課後に圭一の家に行った。 圭一の家族が帰ってくる直前まで勉強して、それから圭一の部屋に移動して少しだけキスしたりする。暗黙の了解のように、その日やるべき勉強を終えるまでは何もしなかった。「ん……」 キスには...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(21)

「明日もやる?」「え? でもお前も勉強あるし」「いいよ。あ、そしたら俺も古文とか教えてくれよ」「それはいいけど……」「基本は自習で、分からないところだけ教え合ってさ」 多分、圭一は本当にそうしたいんだろう。そう思ったので、旭は頷いた。「いい...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(20)

7.リビング 圭一の家に入ると、今日は廊下を奥まで進み、リビングに通された。「あれ、お前の部屋じゃなくて?」「あっちだと教えにくいだろ」 確かに、テーブルの類のない圭一の部屋だと、勉強はしにくいかもしれない。圭一はソファに鞄を置くと、キッチ...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(19)

「――どういう意味で?」「付き合いたいって意味で」 淡々と答えた旭に、圭一は何故か苦しそうな顔をした。あの日、圭一の部屋で見せたのと同じような。「……何でそんなこと聞くんだよ」 初めて圭一が目を逸らしたが、旭は何も答えずに待った。しばらく沈...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(18)

6.発覚 週の明けた月曜日、授業が終わった後に教室を出ると、こちらの教室まで迎えに来た圭一と廊下で鉢合わせた。「あ、終わってた?」「おう」「柏崎くんは?」「さあ。もう帰ったんじゃね」「そっか」 そのまま一緒に学校を出て、圭一の家に向かう。こ...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(17)

「お前、昨日そんな大変だったの? 宿題」 翌朝、また下駄箱の前で出くわした圭一が、笑いながら聞いてくる。「え? いや、別に」「珍しくラインなんかしてくるからさ、よっぽどかと思ったわ」 その少し揶揄するような圭一の言葉に、旭はかすかにいらっと...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(16)

5.違和感――とは言え、昨日の今日でどんな顔をして圭一に会えばいいのか。 翌日、絶えず前方に圭一の姿を探しながら、旭はいつもの急な坂道を歩いていた。見慣れた背中は今のところ視界の中にはなく、歩いているうちにそのまま校門前に着いてしまう。ほっ...
知らぬ間に失われるとしても

知らぬ間に失われるとしても(15)

4.ぐるぐると 圭一と、付き合う。 数時間前に触れた圭一の唇と舌の感触を何度も思い出しながら、旭は自室のベッドの上に寝転がって天井を見上げていた。圭一に言われたとおり、というより言われるまでもなく、帰宅してからも旭はそのことについてずっと考...
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