偽りとためらい 偽りとためらい(58) その日は金曜日で、毎週4限にゼミがあった。高志が教室に行くと、茂はまだ来ていなかった。高志が適当な席に着いていると、徐々にゼミ生達が集まり出し、茂も時間ぎりぎりに教室に入ってきた。そして高志を見ないまま、離れた席に着いた。他のゼミ生が発表す... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(57) 「昨日あれから話してて、今度大槻さんとかも一緒に飯行こうってことになったんだけど、藤代も行くだろ?」 次の日、昼食の時に茂からそう言われたので、高志は頷いた。「行く。また日が決まったら教えて」「分かった。佳代ちゃん側にも言っとく。今のところ... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(56) 第19章 三年次・9月 9月後半、後期が始まり、大学生活が再開した。高志の生活もまた日常に戻り、毎日大学に通って授業を受け、空き時間には茂や他の友人達と話し、部活に通うようになった。 アルバイトも、たまに入る日曜日を除けば平日の朝に週に一... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(55) 出し終えると、高志は自身を抜き、荒い息をしながら咲の隣に横たわった。そのまましばらく目を閉じていたが、呼吸が落ち着くに従って、気持ちが急激に冷めていくのが分かった。自分は何をしているんだという自己嫌悪と同時に、咲に対しても軽い嫌悪を覚え、咲... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(54) 「高志くん、帰ろう」 その日もまた、終わり時間が咲と同じだった。やはり断り切れず、高志は無言のまま、咲と一緒に通用口を出た。またカフェにでも連れて行かれるのかと思っていたが、その日はいつもと少し違う道を進んでいることに気付く。「どこに行くん... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(53) その咲から花火大会に誘われたのは、その約二週間後だった。あの後まだ数回しか一緒に働いてもおらず、高志にとって咲はまだ他人も同然の存在だったが、それより少し前に彼女がいるかどうか聞かれた時、少しだけそういうニュアンスは感じ取っていた。「私、今... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(52) 第18章 三年次・7月 梅雨も明け、本格的に夏がやってきた頃に前期試験が始まった。三回生になると授業にはゼミやその他の演習も増え、筆記試験を行う科目は少なくなる。高志はレポート等の課題に追われながらも、時間が空いてくるとすぐまたアルバイト... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(51) 「それでさ……あの小説で、男が男を好きになってたけど、それからどうするのかなと思ってさ、ちょっと聞いてみたかったんだけど」「そうだったんですね。でもすみません、あれは所詮作り話なので、参考にはならないと思います」 BLはセオリーに則って描か... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(50) 第17章 あかり あかりの所属する文芸サークルと隣のイベントサークルは、毎年の新歓懇親会を合同で行うのを慣例にしている。今年はあかりも参加予定だった。 当日は文芸サークルから11名、イベントサークルから14名の参加があった。最初は席も自然... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(49) 「舌は入れてないだろ」「そういう問題じゃない」 あと、音たてんな、と言うと、「じゃあ、舌入れなくて、音もたてなかったらしていいってこと?」と茂が悪乗りして聞いてくる。その質問は高志の許容範囲を既に超えていて、高志は答えることができない。して... 偽りとためらい