偽りとためらい 偽りとためらい(37) 第14章 二年次・12月 月曜日が来て、火曜日が来て、水曜日が来て、木曜日が来た。その間、高志は努めていつもどおり授業に出て、たまに朝にバイトに入り、授業が終わった後に部活に出て帰宅した。学校やバイト先でやるべきことをやったり人と話したりし... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(36) 第13章 二年次・10月 茂と焼肉を食べた数日後にまた大学の授業が再開したが、茂から聞いていたとおり、どの授業に入ってもそこに佳代の姿はなかった。佳代の友人達と会った時、彼女達は口々に茂に「細谷くん、淋しいね」と言っていた。茂は笑って「淋し... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(35) 第12章 あかり「あれ、矢野さんだけ?」 その日、あかりが一人で部室で本を読んでいると、ドアが開いて隣のサークルの男子が何人か入ってきた。隣のサークルとは単に部室が隣り合っているだけで、それぞれの活動内容は異なるのだが、伝統的に何故か行き来... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(34) 「だから、今までは心情的な部分をメインに書いていたんです。それはそれで一定の評価もしてもらったのだと思いますが、恋愛感情を描くなら成就を求められますし、その為にベッドシーンが必要だと言われました。その事実を仄めかすだけではなく、行為の具体的... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(33) 第11章 現在 翌日、指定されたとおりの時間に待ち合わせ場所に向かうと、あかりはすでにそこにいた。「こんにちは」「……うす」 昨日の会話を忘れたかのように普段どおりに接してくるあかりに対して、高志は昨日の会話のせいで気まずい思いを拭い取るこ... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(32) すぐに運ばれてきたビールでひとまず乾杯し、肉や野菜を次々と焼いて食べながら、しばらく思い付くままに喋る。「――そう言えば、佳代ちゃんが、藤代によろしくって」「え? ああ、そう」 何故今よろしくなのか分からないが、とりあえずそう返す。「今日... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(31) 第10章 二年次・9月 ターミナル駅の改札前で行き交う人混みを避けながら壁にもたれて待っていると、時間より少し遅れて茂がこちらに来るのが見えた。「藤代、ごめん」「お疲れ」 久し振りに会う茂は、特に久し振りという印象もなく、いつもと同じだった... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(30) その後、学校でいつもと同じように茂と授業を受け、いつもと同じように時折佳代とも顔を合わせたが、二人の仲に特別な変化はないように見えた。あの日以降も以前と変わらず、会えば親しげに話していた。茂も、高志には特に何も言ってこない。あの夜に茂から... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(29) 第9章 二年次・5月 いったん延期されたぷよぷよ大会は、その後ゴールデンウィークを挟んで5月中旬にあらためて開催された。いつもと同じように20時過ぎに高志が茂の部屋に行くと、その日は全員で座卓を囲んで、同じ形の携帯ゲーム機で何かのゲームをし... 偽りとためらい