偽りとためらい 偽りとためらい(47) その夜、三人が帰った後、例によって高志が先にシャワーを借りて、その後で茂が入った。いつもならそのまま寝る時間だ。タオルで髪を拭きながらバスルームから出てきた茂に、高志は声を掛けた。「さっき言ってたデートの途中で帰った日って、俺が電話した日の... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(46) 例年行われる新入生向けの入部勧誘期間も終わった頃、今年度最初のぷよぷよ会が招集された。最近ではただの飲み会となっている。集まるのは例の合コン参加以来だったため、もう去年の話になるのに、合コンのことを聞かれた。「全然駄目だった。あんまり話せな... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(45) 第15章 三年次・4月 三年次からは、学部生はそれぞれ一つのゼミに所属し、その後二年にわたって担当教授の指導を受けながら卒業論文を作成して、四年次の終わりに提出することになる。そして所属ゼミの希望はあらかじめ二年次の終わりに提出することに... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(44) 翌週金曜日のぷよぷよ会でまた自分に対してのリア充認定発言が出た時、高志は彼女と別れたことを正直に伝えた。しかし何故か高志のリア充認定は覆らなかった。伊藤曰く『リア充が彼女と別れただけ』らしかった。 伊藤の言うリア充の定義もよく分からない、な... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(43) 次の日、高志が目覚めると7時過ぎだった。 久し振りにぐっすり眠った気がした。何となく、心の中にぽっかりと空白があるような感じがする。今まであった何かが抜け落ちているような不在感。でも悪い気分ではなかった。失われているのは、この一週間ずっと苛... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(42) 持っていたチューハイの最後の一口を飲み終えたので、高志は立ち上がって新しい缶を取りに行った。だいぶ頭も冷え、おかしな雰囲気も消えつつあった。 もうそろそろ、ぷよぷよを再開してもいいかもしれない。そう思いながら戻り、茂の横に座ると、茂が呼び掛... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(41) そうやって横で笑ってごまかす茂は、もちろん高志が今日ここに来た理由を分かっていないに違いなかった。自分がどれだけ高志の心の支えとなっていたかを。軽蔑なんて酷い誤解をさせるくらいなら、それをきちんと伝えなければと高志は思った。「お前は分かって... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(40) 先に入るように言われて、高志はシャワーを浴びた。高志が出ると、入れ違いに茂が入る。座卓の上は茂が片付けてくれていたので、高志はテレビ台からゲーム機を取り出し、ぷよぷよをセットした。 やがて茂も出てきたところで、二人は対戦を始めた。 ゲームに... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(39) 電車が到着する度に、駅から人波が吐き出されてくる。何回目かの人波の中に茂を見付けて、高志は立ち上がった。「藤代。悪い待たせた」 茂は手を上げて近付いてくる。「ごめん、いきなり」「いや全然? 暇だし」 とりあえず歩き出す。「もう飯食った?」「... 偽りとためらい
偽りとためらい 偽りとためらい(38) 「来週金曜、またうちに集合な」 次の日、そう言って笑った茂が、高志の不調に気付いているのかどうかは分からなかった。この一週間、茂は特に何も言わなかった。このタイミングで次の会が企画されたことは、たまたまなのかもしれないし、高志を気にしてのこ... 偽りとためらい