偽りとためらい(24)

 ぷよぷよ大会について、今週の金曜日はどうか、と茂に確認されたのは月曜日のことだった。高志の方も特に予定はなかったので、そのまま今週ということになった。その時、茂の様子はいたって普通だったと思う。
 今日がその金曜日だ。
「……食べないのか?」
 昨日から、茂の様子が少しおかしいような気がする。自分の気のせいかもしれないが、いつもより少し口数が少ないように思うし、話し掛けた際の反応も若干遅い。今日になってもそれは変わらなかった。食堂で向かい合って昼食を取っている今も、ほとんど手が動いていない。
「ん? 食べるよ」
「体調悪いのか?」
「いや、大丈夫」
 あまり色々聞くのも鬱陶しいかと思い、高志はしばらく黙ったまま自分の定食を食べた。茂は何度か箸を口に運んだものの、また手を止めてじっと茶碗を見つめたりしている。
 昨日も、いつもなら完食する茂が珍しく昼食を残したので、少し違和感を覚えた。一昨日の水曜日はどうだったか思い出そうとしたが、よく覚えていない。何も気付かなかったのなら普通だったのかもしれない。
 ほどなく高志は定食をきれいに食べ終わったが、その時点で茂の皿の料理は半分以上残っていた。思い出したように少しずつ口に運び、遠くを見ながら咀嚼している。高志の存在を忘れて深く物思いに耽っているようだったので、高志はわざと目の前の茂を真正面から見つめてみた。いつ気付くだろうかと思ったら、意外と早くこちらの視線に気付いた。
「何? じっと見て」
「いや、観察してるだけ。気にするな」
「するだろそれ」
 茂が苦笑する。
「もっと食えよ」
 高志がそう言うと、茂は一瞬手を止めて高志を見、それからふっと笑って「おう」と頷くと再び食べ始めた。今度は普通に食べている。そしてそのまま完食した。


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