知らぬ間に失われるとしても(12)

「……お前、柏崎くんが好きなんじゃないの」
 何を言っていいか分からず、とりあえずそんなことを口にした。答えはもう分かっているのに。
「そう思われてるんだろうなって思ってたけどさ」
 圭一が苦笑する。
「でももしそうでも、お前、別に気持ち悪いとか思ってなさそうだったから」
「まあ、それは」
 どちらかと言えば現実味がなかったというだけだけど。
「……」
 急かさないようにと思っているのか、圭一はもう何も言おうとしない。ただ、旭の顔をじっと見る。
「……まじで俺のこと好きなの」
 沈黙に負けて、つい旭はそう言った。
「うん」
「全然そんな感じじゃなかっただろ」
「そうかな。まあそうかも」
 今までの圭一の態度を思い出してみる。普通に友達として仲良くしているつもりだったけど、何かそんな態度はあっただろうか。よく分からない。
「お前に彼女できてから気付いたし」
「……付き合うって、何すんの」
「お前が言ってたように、じっくり話して親密になるとか?」
「それ、友達とどう違うんだよ」
「俺が最初にそう聞いたんだけどな」
 苦笑しながら圭一が言う。
「お前が柏崎と付き合ってみようと思った時に考えたのと同じようにすればいいよ」
「別に、本気で付き合おうなんて思ってない」
「でも何か意味があったんだろ」
 旭はちらりと圭一の顔を見たが、すぐに目を逸らした。
「……今までと何か変わんのかよ」
「黒崎が変えたくなかったら、変えなくていい」
「……」
 どう答えていいのか分からない。もしOKしたらどうなるんだろう。
 逆に、もし断ったら。
「もし……」
「ん?」
「もし、仮にだけど、断ったらどうなんの」
「断りたい?」
「じゃなくて……仮定の話で」
 圭一は少しだけ黙り込んだ後、
「まあ、全く今までどおりって訳にはいかないんじゃね」
と言った。その冷たい口調に、少しだけどきりとする。
「……」
「やっぱり無理か?」
「……分からないけど」
「気持ち悪い?」
「……そんなことは……」
「男なんかあり得ない?」
「……」
「そうじゃなかったら、考えてみてほしいんだけど」
「……あの」
「すぐに決めなくてもいいから」
「……」
「無理そう? 考えるのも」
「……」
 答えられない旭にしびれを切らしたのか、圭一は言い捨てるように呟いた。
「女だったら、知らないやつでも即OKしたのにな」
 旭は思わず言葉を失った。呆然と圭一の顔を見る。今まで圭一にそんな辛辣な物言いをされたことがなかった。ついさっき、後悔していると伝えたところなのに。
 圭一はしばらくそんな旭を見つめた後、「ごめん」と言った。

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