続・偽りとためらい(12)

「昨日はどうだった? 上手くいった?」
 次の日、外で待ち合わせた希美にそう聞かれ、高志は頷いた。
 並んで歩きながら、二人は近くのショッピングモールへと向かっていた。そこにはワンフロアを占めるインテリア雑貨専門店があった。ソファも何もない高志の部屋に来ると、いつも希美は直接床の上に座る。それが前から気になっていた高志は、何か下に敷いて座れるものを買うことにした。そしてどうせなら希美に選んでもらおうと思い、今日の機会に誘ってみたところ、希美は上機嫌で了承した。
「ああ。大学の時みたいに普通に話せた」
「楽しかった?」
「うん」
 そう答えた高志は、金曜日のことを思い出した。
「そうだ。ごめん、次の金曜日、また無理になった。そいつと会うことになってさ」
「そうなの?」
 希美が少し不思議そうに聞いてくる。確かに、二週連続で同じ友人に会うのは少し奇妙に聞こえるかもしれない。
「大学時代、そいつ下宿してたからよく部屋に遊びに行ってたんだけど、俺が独り暮らししてるって言ったら、今度はうちに来たいって言い出して」
「そうなんだ。泊まるの?」
「いや、さすがに泊まらないと思うけど」
「じゃあ、また土日に会える?」
「多分大丈夫。また泊まる?」
 希美は頷きかけたが、ふと何かに気付いたように首を振った。
「ううん、帰るかも」
「あ、そう?」
 何か予定でも思い出したのかと高志は特に気にしなかったが、希美が小さな声で、「多分、来そうだから」と言った。
「ああ」
 高志が理解して頷くと、希美は高志の顔を少し見上げてくる。
「……高志くんて」
「え?」
 希美は何か言いかけたが、残りの言葉を飲み込んだ。首を振ると、手を繋いでくる。
「……暑い?」
「いや、いいよ」
 そのままショッピングモールまで歩いた。
 目指す店に行き、厚めのフロアクッションを二つ買った。

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