続・偽りとためらい(7)

 週の明けた月曜日、高志は仕事終わりに希美を呼び出した。どこかでお茶でもと思っていたが、結局食事に行くことにする。ちょうど金曜日の埋め合わせにもなった。
 二週連続で金曜日の夜に会えないことを希美に伝える時に、高志はかいつまんで事情を話した。大学時代に行き違いがあって今まで音信不通になっていた友達と、先週ついに連絡が取れたこと。今週食事に行くことになったこと。
 それらを話すと、希美は、
「それで、先週も早く帰ったんだ? でも上手く仲直りできて良かったね」
と言って笑った。その表情を見て、高志も自然と笑顔になる。
「うん。良かった」
「金曜日のことは全然大丈夫だよ」
「ごめんな」
「ううん。でももし空いてたら、代わりに土曜日か日曜日に出掛けない?」
「ああ、どっちでもいける」
「……両方は?」
「いいよ。泊まる?」
 高志がそう言うと、希美は頷く。
「金曜日に遅くなるんだったら、土曜日は遅めに行くね」
「まあ、そんなに遅くはならないと思うけど。土曜の朝にラインするよ」
「うん」
 家で待ってる、と言って希美は笑った。

――『藤代、ごめん』。
 『ごめんな』。
 あれから何度も思い出し過ぎて、今ではドラマのワンシーンのように頭の中に残っている、最後の茂の言葉。
 金曜日、待ち合わせ場所に電車で向かいながら、高志はまたあの日のことを思い出していた。
 結局、あかりの言うように半年待っても、茂が過去のものとして遠ざかることはなかった。むしろ半年後には連絡が取れると思っていたから、高志はひたすらその時を待った。茂に会いたい気持ちは全く変わらなかった。
 あんな風に高志との付き合いを断たざるを得なかった茂は、今はもう気持ちの整理がついたのだろうか。この前の電話では、ごく普通の口調だった。高志だと分かった時、少し驚いてはいたが、嫌がっているようには聞こえなかった。いつもの如く、それが本音かどうかは分からないけれど。
 今から茂に会えると思うと、再び高志の胸は緊張で締め付けられた。

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