ぬくもり(3)

 高志が準備をする間、茂は顔を上げなかった。
 と言っても、茂は普段から準備の段階ではされるままになることが多かったため、いつものとおり高志に任せているのか、それとも気が乗らないのかが高志には分からなかった。いったん片付けたゴムとジェルをもう一度取り出した後、茂の履いているスウェットと下着を脱がせようと手を掛けながら、念の為「嫌?」と聞いてみると、茂はこちらを見ないまま、
「嫌じゃない。して」
と言った。
 茂が少しだけ腰を上げたので、そのまま下を全て脱がせる。その後で、高志は自分も下だけ脱いだ。
 茂の細い脚がベッドの上に無造作に伸びている。上になっているその右脚に軽く触れると、茂が意図を理解したように膝を軽く折り曲げた。そうして少しだけ開いたその狭間にジェルを塗る。ふとさっきの茂の言葉を思い出して、高志は元どおり茂の後ろに寄り添うように再び横たわった。手だけを伸ばしてそこに塗り込め、少しずつ指を入れていく。
――今、茂は何を考えているのだろう。
 数時間前にも解したそこを再び指で解しながら、高志は辛うじて見えている茂の頬を見つめる。あの頃のことを思い出しているのだろうか。今どんな顔をしているのだろう。茂に背中を向けられていると、高志自身が少し落ち着かない気分になる。
 何でこの体勢でしたいと言ったのだろうか。あの頃と違って顔を伏せる必要もないのに。
「細谷」
 指を動かしながら呼び掛ける。
「キスしたい」
 わざとそう言うと、やっと茂がこちらを向く。その表情に特に翳りはないように見えた。少し唇を合わせてから茂の顔を見る、ということを繰り返していたら、茂が笑い出した。
「何で小出しにしてんの」
 そう言う様子に特に変わったところはない。高志を柔らかく見つめる茂の目にいつもの安らぎを感じながら、高志はもう何も気にせずにゆっくりと唇を合わせた。
 やがて高志は茂の後ろをほぐしていた指を抜き、少しだけ体を離して、自身にゴムを装着した。茂が再び上半身を伏せて枕に顔をうずめる。位置を合わせて先端をぐっと押し込んでから、茂の腰を手で押さえて更に深く埋め込んでいった。
「……大丈夫か」
 そう声を掛けると、浅い呼吸を繰り返していた茂は、顔を伏せたまま頷いた。それから腰に置かれた高志の手を取り、自分の胸の前まで持っていった。
 もう片方の手もシーツとの隙間に滑り込ませて、高志は両手で茂の体を抱き締めた。そのまま腰を動かすと、奥まで届くその深さに茂が切れ切れの吐息をにじませる。額を枕にこすりつけるようにしながら、高志の腕を抱える手に一層の力を込めてくる。
 茂を自分の腕の中に閉じ込めながら、高志は行為の最中にいつも覚える感慨をまた思い出していた。茂が男であること、自分が茂に愛しさや興奮を覚えること。それは感慨とも言えるし、未だ消えない違和感とも言えた。茂が自分に揺さぶられて呼吸を乱す様を、その息遣いや背中越しに伝わってくる震えを、今までにない至近距離で感じる。腹部に回した手でしっかりとその腰を支えて同時に後ろから突くと、茂が耐えきれない喘ぎ声を漏らした。

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