偽りとためらい(11)

 最初の敵が一番弱いのは当然だが、それでも茂のプレイは高度だった。あっという間にステージが終わった。
「お前すげえな」
 感心すると、
「まあ、だいぶやってるし」
と照れ隠しのような笑顔で返され、はい、とまたコントローラーを渡される。ビールのせいで顔が赤くなっている。機嫌も良さそうだし、もしかしたら酔っているのだろうか。ふと温度を確かめたくなり、高志は手の甲で茂の頬に触ってみた。熱い。
「ん?」
「酔ってるか?」
 こちらを振り向いた茂に、顔が赤い、と言うと、一度瞬きした後、こちらに近付いてきた。軽く唇が重なり、すぐに離れていく。
「――」
 高志は、呆気にとられたまま茂を見つめていた。
「あ、しまった」
 茂が自分の口を手で覆ってそう言う。何故か、それほど慌てた様子はない。
「悪い、藤代」
「……酔ってるのか?」
「いや、ごめん、練習台っていうか。ごめん」
――練習台? ああ、そういうことか。
 そう納得しかけた高志の表情を見て、更に茂は言う。
「あ、違う、練習っていうか、復習」
 ごめん、と何回か繰り返す。
 要するに、近い過去に佳代とキスして、それを思い出したか何かで、高志にしてしまったということだろうか。
「……お前なあ、男にすんなよ」
「うん、まじごめん」
 何故か笑いながら茂は答える。
「復習っていうか、単に舞い上がってるだけだろそれ」
「かも。ごめんな」
 表情は緩んだままだが、何回も謝ってくるので、一応は悪いと思っているのだろう。
「いや、まあ、いいけど」
 遥香と初めてした時のことを思い出すと、浮かれる気持ちは分からなくもなかったし、特に腹が立った訳でもなかったので、流すことにした。茂も明らかに酔っている。
「藤代は、優しすぎるんだよな」
 と、いきなり自分の話になり、高志は「え?」と聞き返した。
「さっきも練習って言った時、『練習だったら協力してやろう』みたいな顔してたからさ」
「はあ? そんな訳ないだろ」
「嫌なことは嫌って言わないと駄目なんだからな」
「お前が言うな」
 どん、と茂の腕を軽く殴る。
 茂は笑いながら、いつの間にか床に転がっていたコントローラーを拾い、高志に渡してくる。受け取って、ゲームを再開した。

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