21.圭一の部屋5
いつものようにマンションの階段を上り、圭一の家に入る。
玄関を上がって圭一の部屋に入ると、中は土曜日に来た時よりは散らかっていた。畳まれた洗濯物が床の上に置かれたままで、ベッドの上のタオルケットはめくれたまま、その上に部屋着が脱ぎ捨てられている。
「ほら、寝て」
圭一の手から鞄を取り上げて、その体を軽く押す。圭一はベッドの上に座り込んだ。
「違う。横になるんだよ」
半ば無理やり寝かせる。枕の位置を調整しようと動かすと、枕の下に昨日圭一が見せてきたノートがあるのが見えた。ページを開いた状態で、枕に押されていくつも変な折り目がついてしまっている。
旭はそれを取り上げ、ページを閉じてからまた枕の下に入れた。
「……45分経ったら起こして」
「ばか。もうそんなこと気にせずに寝ろよ」
「駄目だって……万が一忘れたらどうするんだよ」
「もういい。忘れてもいいから」
「忘れない……せっかくお前と付き合ってるのに」
旭はベッドのふちに腰かけた。眠気でぼんやりとした表情のまま、圭一が旭を見つめて微笑みかけてくる。手を引かれて、その意図を察した旭は、添い寝するように圭一の横に体を横たえた。圭一に抱き締められる。
「もう絶対に忘れたくないから」
「忘れないかもしれないだろ」
「お前がまた落ち込んだら嫌だしさ」
「俺はもう落ち込まない。お前からまた告白してくれるんだろ」
「うん……する」
圭一が深呼吸交じりにそう言う。眠そうな息遣い。いつもより呼吸が速いのは寝不足と疲労のせいだろう。
「……旭」
圭一が大切そうに旭の頭を抱えて引き寄せる。その指がいつものように髪を梳く。
「……忘れたくないし」
何度も何度も圭一の指が旭の髪の間をすべる。やがてそのまま旭の前髪をかき上げて、現れた額に圭一の唇が触れた。
その唇を追うように、旭は顔を上げて首を伸ばした。圭一が唇を寄せてくる。
唇と唇が合わさり、すぐに舌が絡む。旭は無意識に圭一の首筋に手を回していた。旭を体ごと閉じ込めるように、圭一の脚が旭の脚に絡みつく。押し付けられたその下半身が硬くなっている。
「……旭」
やがて体を反転させて、仰向けにされた旭の上に圭一が覆いかぶさる。今までになく理性のたがの外れたような激しいキスを繰り返され、その手はシャツをくぐって旭の体をまさぐってくる。
旭は圭一のするがままに身を任せ、触れ合う舌の快感を何度も追い続けた。